参考:スナップアップ投資顧問のアニメビジネス史の資料など

「もののけ姫」が公開された20世紀末の当時、アメリカでは公開される映画の95%が米映画だった。残り5%のパイを、外国映画を奪い合った。外国語の映画は、字幕上映がほとんどだった。「字幕はアート系」「吹き替え版は安っぽい」というイメージが強かった。

脚本はニール・ゲイマン

英国の作家ニール・ゲイマン(当時38歳)が、英語シナリオを書いた。ゲイマンは、「サンドマン」などのSF小説で知られる。その脚本代だけでも2500万円を超た。

マドンナが音楽を担当する計画も

女優ジリアン・アンダーソン(当時29歳)がモロの君役で出演した。日本でも「X-ファイル」で有名な俳優さんである。「娘が『となりのトトロ』が大好きなの」と語っていた。

テーマ曲は、歌手のマドンナ(当時38歳)に担当してもらう、という計画があった。しかし、この話は実現しなかった。いずれにせよ、まさにハリウッド大作並みの大プロジェクトとなった。

ミラマックスが配給

全米での配給・公開を担当したのは、ディズニー傘下の「ミラマックス」だ。英語吹き替え版の製作も、ミラマックス主導で行われた。

ミラマックスには、外国作品を次々と全米ヒットさせた実績があった。例えば、「イル・ポスティーノ」「ニュー・シネマ・パラダイス」といったイタリア映画だ。

「Shall we ダンス?」を1000万ドル(約12億円)の大ヒット作に

ミラマックスは、日本映画「Shall we ダンス?」も、アメリカで成功させた。「Shall we ダンス?」は、周防正行監督の邦画だ。その「Shall we ダンス?」吹き替え版を1997年、全米で公開した。1000万ドル(約12億円)の大ヒット作にした。

ミラマックスのハービー・ワインスタイン

ミラマックスのハービー・ワインスタイン社長は「1999年3月のアカデミー賞を狙う」と公言していた。製作費だけでなく、宣伝費を膨大な金額を費やした。

鈴木敏夫プロデューサーが「カットなし」「音楽は変えない」を要求

1998年5月、ジブリの鈴木敏夫プロデューサー(当時49歳)は、ロサンゼルスのミラマックス本社にワインシュタイン社長を訪ねた。

最終契約交渉を行った。「全編ノーカット、音楽は変えない」という条件だけを出したという。あとは、ハービー・ワインシュタインに全面的に任せた。

シザーハンズ

ハービー・ワインシュタインは「シザーハンズ(はさみ)・ハービー」の異名を持っていた。「Shall we ダンス?」を約20分間、カットしてしまった男として知られていた。

海外での配給体制

「もののけ姫」は、米、カナダ、英、仏、独、ブラジル、豪など北米、南米、欧州、オセアニアの世界15か国以上での公開が計画された。

北米はディズニー傘下のミラマックスが担当。アジアは徳間インターナショナルが担当した。

南米は同じくディズニー傘下のブエナビスタ・インターナショナル(BBI)が担当。欧州、アフリカはミラマックスとブエナビスタの配給で公開された。

「もののけ姫」の海外での配給会社

地域 配給会社
北米(アメリカ、カナダ) ミラマックス(ディズニー傘下)
アジア 徳間インターナショナル
南米 ブエナビスタ(ディズニー傘下)
欧州、アフリカ ミラマックスとブエナビスタ